お気に入りの映画にBagdad Café(バグダッド・カフェ、
原題:Out of Rosenheim)があります。
1987年に当時の西ドイツで公開され、1989年、
ミニシアターブームであった日本ではシネマライズ
(東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル)で初公開
されて大ヒットした珠玉の名作です。
(※2016年8月追記 シネマライズは2016年1月7日閉館した)
突如、砂漠の真ん中にあるカフェに現れたドイツ人旅行者
ジャスミンと、カフェの女主人ブレンダとの友情、カフェ兼
モーテルで暮らす人々や、そこに集まる人々との心の交流を
描いた作品です。
Bagdad Café – あらすじ –
モハーヴェ砂漠の中にある寂れた「バグダッド・カフェ」に、
ひとりの旅行者がたどり着く。
彼女の名前はジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)。
ドイツ・ローゼンハイムからの旅行者で、彼女はアメリカ旅行中に
車中で夫(ハンス・シュタードルバウアー)と喧嘩をし、砂漠の
ハイウェイの真ん中で車を降りてしまう。
仕方なく自分の旅行カバンを引きずり、やっとの思いでここまで
辿り着いた。
ブレンダ(CCH・パウンダー)は、めったに客のこないモーテルと
ガソリンスタンドを兼ねた「バグダッド・カフェ」を切り盛りする
経営者。
夫のサル(G・スモーキー・キャンベル)はろくに仕事もせず、
毎日ぶらぶらしているし、ティーン・エイジャーの娘フィリス
(モニカ・カルホーン)はどこかのトラッカーやバイカーと毎日
遊びまわっていて、遊ぶための小遣いをせびり、息子のサロモ
(ダロン・フラッグ)は店も手伝わず、まだ赤ん坊である自分の
息子の世話もそっちのけで毎日ピアノの練習をしている。
閑散としたカフェ。コーヒー・マシンは故障し、やる気なさげな
バーテンダーのカヘンガ(ジョージ・アギラー)はいつも昼寝を
している。そんな生活に苛立ちを感じ、満たされない思いで
日々を過ごしていた。
ブレンダは夫に、新しいコーヒー・マシンを買いに街まで使いに
やらせるが、ジャスミンの夫が腹立ちまぎれにハイウェイに捨てて
きた、コーヒーが入った魔法ビンを拾って帰ってきただけ。
やることなすこと半人前で、ことづかった買い物も満足にできない
夫にブレンダはいら立ちを隠せず「サル、その頭は飾りかい?
子どもじゃあるまいし。子どもはもう2人もいるんだよ」と
怒鳴りつける。ブレンダにさんざんののしられた夫は嫌気がさし
家を出て行ってしまう。
失意の中、モーテルの前の椅子に腰かけ涙に暮れていた
彼女の前に、ハイウェイの向こうから太った中年女が大きな
旅行カバンを引っ下げて現れ、「部屋に泊まりたい」と
言ってきた。
砂漠のハイウェイの真ん中にあるこのカフェに、車も連れも
なく突如として現れた旅行者ジャスミンに、怪訝そうに、かつ
無愛想な態度で接するブレンダだった。
部屋の鍵を受け取り部屋に入り、さっそく荷解きをするジャスミン。
だが旅行カバンには夫の着替えやマジックキットなどが入っていた。
夫の荷物を間違えて自分の旅行カバンの中に入れてしまったことに
気付きジャスミンは困惑する。
ブレンダは、ジャスミンが宿泊する部屋の掃除をする最中、
洗面台の髭剃りの道具を発見する。
部屋の中には男物の服しか掛かっておらず、奇妙な宿泊客
ジャスミンのことを保安官のアーニーに通報したり、何とか
追い出そうと画策するブレンダ。
一方、ジャスミンはブレンダのオフィスがあまりにも汚かった
ため、彼女の留守中に勝手に掃除をしてしまう。帰ってきた
ブレンダはこれに激怒。
「勝手なことをして!ここはあんたの家か?」とジャスミンに
詰め寄る。だが、そう言ってはみたものの綺麗になった
オフィスも悪くないと妙に納得する。
以降彼女はモーテルにしばらく滞在することになるが、
トレーラーハウスの住人で元ハリウッドの画家コックス
(ジャック・パランス)、モーテルの宿泊客でタトゥー・
アーティストのデビー(クリスティーネ・カウフマン)、
カフェの敷地内にテントを張り滞在しているヒッチハイカーの
エリック(アラン・S・クレイグ)など、滞在して(住み着いて)
いる人々はみな一風変わっている。
ジャスミンはその住人達とも徐々に仲良くなっていき、ブレンダの
息子や娘までもジャスミンに次第になついていく。
だが、ブレンダはそれが面白くない。
そんなある日、ブレンダは自分の子どもたちや孫がジャスミンの
部屋で一緒に遊んでいるところを見て怒りが爆発「ここから出て
いけ」、「自分の子と遊びな」と怒鳴りちらしてしまう。
しかし、ジャスミンは「子どもはいない」と寂しげにつぶやく。
彼女の心の奥底にある満たされない思いを知ったブレンダは、
彼女に自分の姿を重ね合わせる。そして怒りすぎたことを反省し
「その・・・ちょっと言い過ぎたよ。どうかしていた。このところ
仕事やら子どもたちのことやらいろいろあって。一週間前に
夫は出ていくし・・・」と、ジャスミンに吐露するのだった。
そしてその日を境に、ブレンダのジャスミンに対する接し方が
変わっていく。
ジャスミンにカフェを手伝ってもらうようになり、彼女はカフェ
に来る客達の人気者に。さらに彼女が披露するマジックが客の
あいだでも評判になり、カフェは活気に溢れ客が押し寄せるよう
になる。そんな不思議な魅力を持つ彼女に、ブレンダは次第に
心を開くようになっていく。
だが、ドイツからの旅行者であるジャスミンのビザの期限が
切れてしまい、また労働許可証なく働いていたために帰国を
余儀なくされ、楽しかったモーテルの滞在に終止符を打つ時が
来てしまう。
ジャスミンはブレンダや子供たち、モーテルの住人たちと別れ、
ドイツに帰国。カフェは再び閑散とし、静寂が戻ってくる。
しかし・・・
ろくでもない亭主を持った似た者同士の中年女ふたりが次第に
心通わせ友情を育んでいく。それを軸に、周囲の人々との日常
の交流を描いた、とりたててここが面白い!という映画では
ありませんが、たどたどしい英語で積極的にコミュニケーション
をはかり、たちまち周りの人々の心を惹きつけていく主人公
ジャスミンと、彼女を取り巻くキャラクターが非常にユニークで
あり、一言では言い尽くせない奥深さを感じます。
日常生活に疲れたとき、ふとこの映画を観るとなぜか癒される、
ハートウォーミングなおススメの映画です。
この映画のテーマソングは、Jevetta Steeleが歌う
『Calling You』。
この『Calling You』は、Holly Coleなど、さまざまなアーティスト
たちがカヴァーしています。
Jevetta Steele – Calling You