今回は、マグナス・カールソンのソロ・プロジェクト・アルバム
『Magnus Karlsson’s Free Fall』(2013)、『Magnus Karlsson’s Free Fall :
Kingdom of Rock』(2015)をご紹介します。
Magnus Karlsson
2008年、マグナス・カールソンはFrontiers Recordsよりリリースされた
イギリスのハードロックバンドMagnumのヴォーカリスト、Bob Catley
(ボブ・カトレイ)のソロ・アルバム『Immortal』ソロ・アルバム
『Immortal』に参加。すべての曲の作詞作曲、キーボード、ギターを
担当した。
同年、ドイツのヘヴィメタルバンドPrimal Fear(プライマル・フィア)に
ギタリスト兼コンポーザーとして加入する。
2013年、Frontiers Recordsよりマグナス・カールソンが今まで一緒に
仕事をしてきたヴォーカリスト、ミュージシャンを迎えた初のソロ・
プロジェクトアルバム『Magnus Karlsson’s Free Fall』を北アメリカで
6月11日、ヨーロッパで6月14日にリリースすることが発表された。
ゲスト・ヴォーカリストとしてラッセル・アレン(アレン・ランデ)、
ラルフ・シーパーズ(プライマル・フィア)、トニー・ハーネル
(Starbreaker、元TNT)、Rickard Bengtsson(Last Tribe)、
マーク・ボールズ(The Codex)、マイク・アンダーソン
(Planet Alliance)、デヴィッド・リードマン(ピンク・クリーム69)、
リック・アルツィ(At Vance、マスタープラン)、 Herman Saming
(A.C.T)が迎えられた。
マグナス・カールソン自身もアルバムの13曲のうち4曲を歌った。
また、ドラマーとしてDaniel Flores(The Codex)が迎えられた。
Magnus Karlsson’s Free Fall(2013)
収録曲
1. Free Fall(Vo:Russell Allen)
2. Higher(Vo:Ralf Scheepers)
3. Heading Out(Vo:Magnus Karlsson)
4. Stronger(Vo:Tony Harnell)
5. Not My Saviour(Vo:Rick Altzi)
6. Us Against the World(Vo:David Readman)
7. Our Time Has Come(Vo:Mark Boals)
8. Ready Or Not(Vo:Magnus Karlsson)
9. Last Tribe(Vo:Rickard Bengtsson)
10. Fighting(Vo: Herman Saming)
11. Dreamers And Hunters(Vo:Mike Andersson)
12. On Fire(Vo:Magnus Karlsson)
13. Stronger(Acoustic Version. Vo:Magnus Karlsson)
Magnus Karlsson(G, B, Key, Vo)
Daniel Flores(Ds)
2013年リリースの、マグナス・カールソン初のソロ・プロジェクト
アルバム。
彼が今まで一緒に仕事をして信頼関係を築いてきたヴォーカリストを迎え、
曲もそれぞれの個性にあわせています。
また、マルチプレイヤーである彼はドラム以外はすべて自身で演奏したという
徹底ぶり。ドラマーはマグナス・カールソンも在籍するプログレッシヴ・
メタルバンドThe Codexや、メロディック・ロック、AORのバンドFind Meで
活動するDaniel Floresを迎えます。
1.は重量感があり表情豊かなヴォーカルが持ち味のラッセル・アレン。
メタリックなギターで始まる2.はラルフ・シーパースの個性を最大限に
生かした曲。ちょっとウェットなマグナス・カールソンのヴォーカルが
印象的な3.と、タイプが違う3人の曲が続きます。
いかついお顔としゃがれ気味の声が程よくマッチしたリック・アルツィが
アツく力強く歌い上げる5.。彼の在籍するAt Vance(アット・ヴァンス)、
マスタープランはどちらもドイツのバンドですが、リック・アルツィ自身は
スウェーデン人です。
6.のデヴィッド・リードマン、7.のマーク・ボールズと、安定のうまさの
ヴォーカリスト2人が続きます。どちらも良曲でお気に入りです。
そして、Last Tribeのリード・ヴォーカルだったRickard Bengtssonが
『Last Tribe』というタイトルの曲で1度きりの復活を果たし、懐かしい
歌声を聴かせます。
そんな中、Herman Samingが歌う10.が異彩を放っています。
彼はスウェーデンのプログレッシヴ・ロックバンドA.C.TやSchlager
(シュラーガー)のバンド、Bra Vibrationerに在籍するシンガー。
レーベルも違うし、友情出演という感じでしょうか(Last Tribeの
2ndアルバムに参加。バックヴォーカルをつとめています)。
ともかく上手いですが、声が軽やか過ぎて他のヘヴィメタル・
ヴォーカリストと明らかに違いを感じます。
11.のMike Anderssonは、ラッセル・アレンに声が似ている気がします。
アルバムはメロディックで美しいバラードを随所にちりばめていて、
イントロからアウトロまで切なげな8.。マグナス・カールソンのヴォーカルが
心に沁みます。
イチオシは何といっても4.の『Stronger』!!
トニー・ハーネルの突き抜けるようなハイトーン・ヴォーカルの魅力を
十二分に引き出した名曲です。
マグナス・カールソンがこれまで培ってきたものが最大限に生かされた、
聴けば聴くほどその良さがわかる、ハイクオリティーなアルバムとなっています。
Stronger
Heading Out
On Fire
2015年、プロジェクトの2作目となる『Magnus Karlsson’s Free Fall : Kingdom of Rock』
をリリース。
前作のアルバムと同様、多くのゲストヴォーカリストやミュージシャンが
迎えられた。
今回はアレン・ランデのうち、ヨルン・ランデが参加。トニー・ハーネル、
リック・アルツィ、デヴィッド・リードマンが前回に引き続き参加した。
その他のシンガーはトニー・マーティン(元ブラックサバス)、
ジョー・リン・ターナー(Sunstorm、元レインボー、元イングヴェイ・
マルムスティーン、ブレイズン・アボット)、ヤコブ・サミュエル
(プードルズ、ミッドナイト・サン)、ハリー・ヘス(ハーレム・スキャーレム)。
異色なところではRebecca De La Motteというスウェーデン出身の女性シンガーが
初参加。マグナス・カールソンは本作でも3曲(ボーナストラックを含む)を
歌った。
今回、ドラマーとしてJaime Salazar(Last Tribe、Planet Alliance、
ミッドナイト・サン、アレン・ランデ)が参加した。
Magnus Karlsson’s Free Fall:Kingdom of Rock(2015)
1. Kingdom of Rock (Vo:Jørn Lande)
2. Out Of The Dark (Vo:Jakob Samuel)
3. No Control (Vo:Joe Lynn Turner)
4. When The Sky Falls (Vo:Tony Martin)
5. Angel Of The Night (Vo:David Readman)
6. I Am Coming For You (Vo:Magnus Karlsson)
7. Another Life (Vo:Rick Altzi)
8. Never Look Away (Vo:Tony Harnell)
9. A Heart So Cold (Vo:Harry Hess)
10. The Right Moment (Vo:Rebecca De La Motte)
11. Walk This Road Alone (Vo:Magnus Karlsson)
12. No Control (Acoustic Version. Vo:Magnus Karlsson)
Magnus Karlsson(G, B, Key, Vo)
Jaime Salazar(Ds)
前回のアルバム『Magnus Karlsson’s Free Fall』はマグナス・カールソンの
得意とするメロディックなハードロック、ヘヴィメタルが主体となって
いましたが、2作目となる『Magnus Karlsson’s Free Fall:Kingdom of Rock』は
さらにキャッチーさが加わったアルバムとなっています。
個人的には『The Right Moment』、彼自身が歌う『Walk This Road Alone』が
お気に入りです。
また、前回に引き続きトニー・ハーネルの透明感のある美しい声が再び聴ける
のがうれしいです。全盛期とまではいきませんが、動画でライヴなどを見る限り、
彼の歌声はいまだ健在です。
他にもジョー・リン・ターナー(レインボー、イングヴェイ・マルムスティーン)、
トニー・マーティン(ブラックサバス)など人気バンドに在籍したヴォーカリストが
参加していることも目玉のひとつです。
興味深いのが、ハーレム・スキャーレムのハリー・ヘスが歌う9.『A Heart So Cold』。
ハーレム・スキャーレムの90年代の名盤『Mood Swings』のあの感動が蘇って
きます。それぞれのヴォーカリストの個性を最大限に生かした曲作りを心掛ける
マグナス・カールソンはつくづく凄い人だなあと、更に感動します。
Never Look Away
The Right Moment
Walk This Road Alone
日本国内では無名に近い彼ですが、Frontiers Recordsの専属
ミュージシャンとしての仕事や数々のプロジェクトに関わるなど、
海外ではその実力は高く評価されています。
彼の曲は日本人のフィーリングに合うものが多いと思うし、もっと
日本で認知されてもいいと思うアーティストの一人です。